粘度

[:ja]前にぜんまい仕掛けの小さなおじいさんが住んでいる。
いつも挨拶をすればカクカク歩きながらとんでもない笑顔を浮かべて手を振ってくる。
耳はもう聞こえないらしい。
彼は朝、明らかに体に見合わないママチャリに乗って器用に家をでる。
毎朝決まった時間にと言いたいところだが時間はまちまちだ。
10分もすれば帰ってくるのだが、家に入った途端すぐに出てくる。
そして彼のハーレーに跨る。
毎日それを繰り返している。

ついさっき細長いベニヤと年老いたメジャー、のこぎりを持って玄関の前に座った。

「切りましょうか?」

彼の反応はない。
そうだった。
僕は彼に近づき、拳一つもない距離で耳に話しかけた。

「切りましょうか?」

言葉は発さないが、満面の笑み。
そのベニヤを受け取り、端から10cmのところで丸ノコを押す。
それを渡すと彼は喜んでいるようだった。
中学の頃の「徳を積む」という言葉を思い出しながらいいことをしたと満足し、仕事に戻る。
ふと玄関に目をやるとおじいさんが次は縦にノコギリで切ろうとしている。
僕はもう一度尋ねた。

「切りましょうか?」

彼は言った。
「いいのいいの。遊びながらやりたいんだ。」

彼のメジャーの裏を見る。
縦並びの汚い文字。

 

ガードマン

 

どうやら都市は簡単ではないようだ。[:]

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です